Case #78 - 孤独と人間関係


タッドという若い男性は子供の頃7歳から14歳の時に寄宿学校に通わされ、両親には休暇の間の2ヶ月だけ毎年会っていたが、彼が家に帰ってきているわずかな時でも父は仕事が忙しくほとんど家にいなかったと語った。 なので私は彼の父親との関係や孤独感について話をした。彼は暗い所にいることも怖かったそうだ。私は彼に自分の孤独をどう受け止めているかを聞いてみた。彼は一方では自分が一匹狼であり自由でいることを好んでいたが、一方では、孤独による痛みや辛さがあると語った。 宗教が人の心の大きな支えになることもあるので、彼のスピリチュアリティについて聞いてみたところ、何度かヴィバッサナー瞑想のキャンプにも参加したことがあり、自分なりの人生観も持っているが、特に強い宗教への思いというのはなかったので、彼のスピリチュアリティはここではあまり助けにならないことが分かった。もし彼が強い信仰を抱いているものがあるとしたら、私はそれを探っていかなければいけないからだ。 私はさらに、彼が「父親像」として私をどう見ているかを聞いてみた。彼は私といると落ち着くことができ、素直に心を開くことができ、また自分が誰かに支えられていることを感じることができ、ものごとをうまく伝えることができると言った。セラピーの中で彼がそう感じていることは分かっていたが、あえて自分が感じたことを言葉にすることにより、ものごとをより深く体験することができるので、私はそのように促したのだった。 彼は人との関係の中で「孤独感による愛の必要性」が強すぎて、パートナーにとっては重くなってしまう可能性があるということを指摘した。そこで、私は彼がどれくらいその想いが私に対してあるかというのと、グループの中にいる一人一人を見つめながら、自分の心がどう動かされ、孤独な気持ちがどう表面下してくるかを感じ取るよう促した。 私がこうさせたのは、彼が人と触れ合いながら自分の心の変動を意識し、一人一人違う人と会いながら相手に対しどのように自分を表しているかを意識させたかったからだ。 そして、彼が私に何を求めているのかを聞いてみた。それに対し彼は「自分が孤独であることを気づいてもらい、ありのままの自分を愛してもらうこと」と答えた。彼はすでに色々なことを私に打ち明けてくれていたので、彼の経験を探って行くことよりも、今度は私が彼に自分のこと打ち明ける番だと答えた。 私は自分が子供の頃親と離れていたことや大人になっても父親から必要な愛と支えを受けることができなかったことを話した。タッドと似たような経験を語ったのは彼の想いを理解していることを示し、私がそれらのことに対しどう対応したかを伝えたかったからだ。 こうして私たちの心はより深くつながり、強固なものとなっていった。 ゲシュタルト法ではいつも「今、ここに」ということと「私とあなた」に焦点をおいている。というのは、クライアントから与えられたテーマを大きな範囲ではなく、今その人の人生において現在起こっていることを具体的に取り扱うことがゲシュタルト法だからだ。そして、グループセラピーや個人セラピーを通し可能な限りそのテーマ(問題)を探り、体験することである。 今回のクライアントの場合、今後の課題としては彼の「孤独感」という感情を取り扱い、他の人といる時にそれをどう感じるかをより深く探って行くことだと思う。しかしそれと同じくらい大切なのは、彼が「人との触れ合い」を体験し、人に彼の存在を「知って」もらうだけでなく、彼が私をも「知り」、私たちがお互いどのような立ち位置にいるかを人間関係を築いていくなかで知ることである。



 投稿者  Steve Vinay Gunther