Case #32 - 自分の今持っているものを活用する


ダイアンは気がかりなことが2つあった。まず一つめは12歳の息子が、彼女が望んでいるほど勉強をしていなかったことだった。 私は息子さんの成績に関して、数字をつけるとしたらどれくらいか聞いたところ、彼女は6か7と答えた。息子さんが宿題をやっているか、という問いには、きちんとしていると彼女は答えた。しかし、優秀な学校に入るためには優秀な成績が必要なので、彼女はプレッシャーを感じていた。 彼女との対話で、私はまず自分の教育論を彼女に伝えた。私は子供が親を敬うべきだと思うし、子供にはバランスのある生活をさせることがいいとも思っているが、子供が優秀な成績をとるということが人生での一番のゴールであるとも思っていない、ということを伝えた。 私が自分の考えをダイアンに伝え、お互いどのような点で違う意見があるのかを見つけることは、私が彼女を助ける上で(また私ができることに限りがあることも知るため)とても重要であった。 彼女はいくつかの教育本を読んでから、息子に少し余裕を持って対応しようとしていたが、彼の将来のことも心配で、どのようにうまくやる気を起こさせることができるのかわからなく、心の葛藤を覚えていた。 そこで、私は彼女にこう提案した。まず息子さんと座って話しをし、彼の成長の上でダイアンにとって何が大切なのかを伝えること。 そうした後に彼女は息子が、今自分の直面している現状をはっきりと理解できるよう、どのような状況下にあるのかを伝えるよう提案した。学校や社会では競争率が激しいということ、また特定の学校に入るためにはある程度の成績が必要だということ。息子が理解しやすいように、様々な学校と入学に必要な条件、またそれぞれの学校に通う上での良い点、マイナスな点を挙げるよう、提案した。 このように提案した後、息子が自分の目標設定をし、自分が将来どのようになりたいか、またそれを実現するにはどのようなことをしないといけないかを考えていくことができるよう、母として息子を支えるよう提案した。 こうすることでダイアンは息子に自分の気持ちを正直に伝え、且つ彼が自分で物事を判断できるよう、支えることもできる。息子に対しての想いから自分が息子の代わりに物事を判断し進めるのでは無く、息子に責任を取らせ、その上で彼を陰で支えるということができる。 彼女のもう一つの問題は夫との関係だった。ダイアンの夫は帰宅後、ビールを飲み、新聞を読んで、自分のブログを書き、妻と子供達は完全に無視するのだった。 もちろん、ダイアンはこのような夫の態度に愛想を尽かしていたが、自分ではどうしていいのか分からなかった。 夫はたまに家族と時間を過ごしたり、家族行事にを企画し、家族と過ごす時間を自ら作り、料理をしてくれることもあった。 しかし、彼は昔からあまり会話が得意ではなかったのは、ダイアンも承知済みだった。 ダイアンの話を聞いていると、夫に嫌みを言ったり、要求をしたり、お互いどのように思っているかを言葉を通して伝えるのは夫にはあまり効果がなさそうなのが分かってきた。 私はダイアンに夫のブログはどのようなものかを聞いてみた。彼女は、夫のブログは自分の考えを明確に書いているし、面白いし、おもしろいコメント付きの写真も載っている、と教えてくれた。彼女は夫と会話する時もそのように楽しませてくれることを願っていた。 これを聞いて、私はダイアンがするべきことをすぐに思いついた。彼女は夫を変えることはできないが、夫の趣味に参加することができる、と。彼女に夫がipadを持っているか聞くと、彼女は「私が隠した」と答えた。 私は彼女に夫にすぐにでもipadを返し、自分も一つ買うよう指示した。そうすることにより、ダイアンは夫のブログを通して彼と会話をすることができると思った。夫はブログに投稿してくれる人には必ず返事をしていたので、彼女はブログに投稿し、彼にメモや、手紙、一行コメントを送ることで彼とうまくコミュニケーションを取ることができると思った。また、彼が座って新聞を読んでいる時でもちょっとしたコメントをブログに投稿してもいい。更には、彼に手紙を書き、それをプリントし、夫に郵送したり彼の枕元に置くのでもいい。 こうすることによって、私は彼女が既にもっているものを活用できるようにした。特に彼女との精神的な面のカウンセリングをしたり、夫があまり彼女と時間を過ごしてくれないのは彼女にどこか悪い所があるのだ、というようなことを思わせないようにしていた。むしろ、彼女自身の今もっているものでクリエイティブな解決策を考え、夫とのある程度決まった形の夫婦関係からどのように一歩踏み出せるかを一緒に考えた。



 投稿者  Steve Vinay Gunther