Case #34 - コンタクト法(ひと触れ合うこと)と正直さ


ネーソンは体格の良い男性で、気配りがうまく、その場にいると存在感がある人だった。 彼の抱えていた問題は人と正直になることができないということだった。 ネーソンは人とほとんど喧嘩をしたり、口論したりすることがなかったし、仕事や家でもおおらかな人だった。 彼が子供の頃、兄と姉が良く激しい喧嘩をしていた中、ネーソンは「良い子」として育ってきた。子供のころ、ネーソンを大きく影響した出来事がいくつかあった。一つは、彼が兄に対し非常な怒りを覚え、兄に物を投げ、もう少しで兄の目を突き刺してしまいそうになった時。もう一つはネーソンが学校で同級生の男の子を殴り、その同級生がネーソンの家に来て彼の顔を引っ掻いたこと。 その時以来ネーソンは内気になり、あまり自分の感情を出さなくなった。 ネーソンは明らかに権力のありそうな人で、体格からもそれが分かるほどだったので、私はネーソンが自分に自身を持っていないと打ち明けてくれた時はとてもびっくりした。 彼は他人に対しとても厳しく、そのためあまり自分の考えを公言しないようにしていると私に教えてくれた。 なので、私はまず彼が他人と正直に付き合うことができるよう、いくつかのプロセスをふむことにした。 このプロセスには3つの要素があった。それは、「彼が物事をどう考えているか」、「彼が物事に対し感じたこと」、そして「彼が他人にして欲しいこと」だ。 私はこのプロセスの一連を彼と練習することが出来、彼は簡単にこのプロセスを取得する事が出来た。 私はこれをauthentic meeting(正直に人と向き合う練習)と呼んでいる。このプロセスを繰り返すことで人との会話でも自分の正直な気持ちを話せるようになり、人間関係でも真っ正面から人と向き合うことができるようになる。 私はネーソンに3人の人とこのプロセスの練習をしてみることをすすめた。一人目は予想通りの対応をしてくれた。2人目の女性はわりと複雑な対応をしてきたので、ネーソンはそれにどう応対すればいいのか分からなくなってしまった。私は彼にフィーリングステートメント(感情を表す文章)を使うように勧めた。私は、特に女性とは、一つauthentic meeting statement(その人に対し正直に自分の考えなどを伝える)をするごとに、3つフィーリングステートメントを入れること、と教えた。 その後彼は3人目の人ともauthentic meetingの練習をした。 私は「authentic meetingをやってみて、どう?」と聞くと、「結構簡単だった」と彼は答えてくれた。 彼の答えを聞き、私はネーソンは少し方向性を示してあげ、それを行動に移すためのサポートさえあれば上手くできるクライアントだということが分かった。 男性として、彼ははっきりとした指示を求めていた。そして力のある者として、彼は自分のプライドを曲げずに自分を助けてくれる人を密かに求めていた。 ネーソンはこのプロセスを一人でも上手く続けていくことができる、と私は確信した。 もちろん、彼の子供の頃のことや彼が問題を回避していることに焦点をあてることもできたが、この方法は今現在の彼の状態や、これからの事にフォーカスすることができ、すぐに効果が見れる方法だった。彼が自分に自身が無いのを見ると、このように早く結果が見れるものはとても大事だと思う。またこのauthentic meetingというプロセスは彼がこれからも人と正直に向き合っていくために良い土台になると思う。 ゲシュタルト心理学でコンタクト(人との触れ合い)はひとつのキーポイントであり、今回のセッションではコンタクト法を用いている。



 投稿者  Steve Vinay Gunther