Case #81 - 「涙」を「心の叫び」へと変える


ジェーンとのセッションは「攻撃的な面を外に出し、人との関係を円滑にさせる」ためのカウンセリングセッションだった。「攻撃的な面」というのは怒りや憤りなどの強い感情のことを意味している。ゲシュタルト法では「攻撃性」というのは悪いものでは無く、むしろクライアントにとって良いものだと考えられている。それは無意識に取り入れられた考え(「成すべき」と本人が思っていること」)を分解していくために効果的だからだ。 ジェーンはしきりに泣き続けていたので、彼女が今どのような気持ちかを聞いてみると「怒りがある」と答えた。 多くの女性は怒りを納めるように教えられているので、怒りの代わりに涙を流す人がよくいるのだ。しかし「泣く」ということは「無力さ」へと変わるため、本当の解決へはつながらない。 そこで私はジェーンに自分の体と心を一体にするよう促した。まず息を吸った時に鼻からお腹へと移動させ、その後、足全体へと吸った息を移動させていくように言った。私は彼女のエネルギーが体の下から上へと移動しているのが見えた。彼女の怒りはどんどん上へと体の中をのぼり、目へと、そして涙へと変えられて行ったのだ。そのため彼女に自分の足をしっかりと地につけ、エネルギーを上から下へと受け流して欲しかった。 まずは足踏みをするように言った。彼女は最初は体が硬直し、なかなかできなかった。私は彼女を支え、呼吸を先ほど言った通りしっかりするように促し、彼女が安全な場所で怒りをしっかりと表に表すことができるよう支え続けた。このようにクライアントが心の奥底にたまっているものをしっかりと表に出すことができるよう支えるのもセラピストの役目の一つだ。 彼女が「地に足をつける」ことを促していくなかで、もう一度足踏みをするようにと言った。彼女ははじめはなかなかできなかったが、ようやく静かに足踏みをした。私は彼女に自分の怒りを感じ取り、それをふくらはぎから足の先へと受け流していくように促した。 また彼女の足踏みを強くさせることにより、彼女のなかにある「攻撃的な一面」を受け止めるよう促した。そして、足踏みに音を加えた。私は彼女と向かい合い彼女と同じ強さで足踏みをした。それは、ありのままの彼女を受け止めてくれる人がいる、ということを彼女が感じることができるようにだった。 これこそがゲシュタルト体験なのだ。それは私たちの選択肢と度量を広げて行くために、問題について「語り合う」ことから、自分の「おかしな」行動を探っていくことである。今回のようなセッションではセラピストのサポートを多いに必要としており、クライアントとのアクティビティもクライアントが本当に必要としている根本的な問題を探るものでないといけない。



 投稿者  Steve Vinay Gunther