Case #84 - 友達を作るのを手伝ってください


リリーは明るい女性だった。私は彼女の いきいきとしてフレンドリーな性格が気に入った。彼女がいると場が明るくなった。私はそのことを彼女に伝え、また彼女の存在を感謝していることも伝えた。彼女とはすぐにうちとけることができたし、セラピーの場で明るさという良い性質を持ち合わせていて、非難するところのない彼女にどのような悪いところがあるのか全く分からないと言った。 彼女は他にもたくさんの人からこのような素敵な言葉を頂いていたことを言ったが、彼女のそのような性格は見せかけで、本当は裏で何か隠しているのだと言う人々もいた。 もしかしたら本当にそうなのかもしれないが、一見みた所わたしにはまだ分からなかった。そこで彼女に自分が隠していそうなこと、例えば怒りや憎悪などを挙げてみる様に促した。しかし彼女は何も思いつかなかった。なので、私はそれ以上根掘り葉掘り聞くつもりはなかった。もしかしたら本当に、ただいつも明るい性格の人なのかもしれないからだ。 私が彼女に年齢を聞くと38歳、独身と答えた。私は彼女のような素敵な女性が相手を見つけられないなんて、なんておかしなことだろう、と言った。彼女は自分でもうまく説明できなかったが、ただ一つ言えるのは男性とのパートナーシップを築くための深いつながりを誰かと持つことができない、と答えた。もちろん、私が推測したように彼女を慕う男性は山ほどいた。 彼女はまた、友達があまりいないということもうちあけた。このことも私にとっては彼女に合わない、おかしなことに聞こえた。 彼女は子供のころ他の兄弟たちとの年齢差が大きかったため、兄弟と遊んだりすることがなく、また彼女が学校に通っていた村も同い年の子供がいなく、学校にいっている時には友達があまりいなかったのだと話した。 これでやっと謎がとけた。彼女は人間関係の築き方を学んでいなかったのだ。こんなにも明るい性格なのに、なぜだか友達の作り方をしらなかったのだ。彼女の説明を聞いても、まだ、私は彼女が友達を作れないということに納得がいかなかったので、グループの中にいる5名を選び、彼らとの話をし、友情関係をさぐってみるよう促した。 しかし、彼女はなかなかその5人を選ぶことができなかった。それは、相手と生理的に合うかどうかを考えてしまっていたからだ。彼女は恋愛関係のように、友情は自然とお互い何か感じるものがあるのだと思っていたようだ。 そのため、自ら彼女が相手とのつながりを求めていかないといけないということを私は説明した。彼女は他人と友情関係を築くことについてなんとなく受動的のようだった。もしくは友情関係の築き方を知らないようだった。 彼女がやっと一人選んだので、その人に出て来てもらい、彼女にその人と対話をしてもらうようお願いした。しかし、予想通り彼女は会話をどうはじめたらいいのかが分からなかった。なので、私が助け舟を出し、相手と友達になりたいということと、その人のことをもっと知りたいということを言うように促した。 彼女が話はじめて分かったことは、相手に関してすぐ色々と決めつけ、その人を非難してしまうことだった。もしこれが一つの性質だけで、相手とそのことについて話し合うのならともかく、彼女はどんどん相手のことに関して色々と決めつけ、その人を批判してしまったのだった。 彼女はまた、頭の中で声がしその声が「この人との関係はたぶんうまくいかないだろう」と言っていると訴えた。私はこの「声」を「妨害者」と呼び、彼女の隣にクッションをおき、邪魔されずに会話を続けられるよう、「妨害者」から自分を切り離すように言った。だんだんと彼女自身あまり社交性がないということが分かってきたので、私は彼らの対話を助け、相手との共通点をどう見つけたらいいかを教えてあげた。 このようにすることはコーチング、つまり実践的なことの助けの一例であった。彼女とはこれからもう少し時間をかけて探って行くべき心の問題はあった。しかし子供のころ養うことのできなかった基本的な対人関係の持ち方は、今すぐにできることの一つであった。彼女が言った「妨害者」を含め、他の深い問題はあとから探っていくことも可能である。彼女が今必要としているものは、アクティビティでやったように誰かとうまくつながる、という新しい体験だった。 ゲシュタルト法には特に決まった形はなく、物事を無意識から意識化させることにフォーカスをしている。しかし、洞察力だけをたよりにしているわけではない。物事には、いつもと違うことを試してみる時と場合がある。そしてゲシュタルト法には二つの側面がある。それは物事を意識化させることと、実体験を通して学ぶことだ。もちろん、タイミングはとても大切だ。まだ心の準備ができていない人にこのアクティビティをさせてもうまく人間関係を構築できないし、対話というアクティビティの中で長々と話しすぎるのもよくない。 だが、このアクティビティをうまく活用することで物事に新しい息を吹き込むことができるし、私がクライアントの話をただ鵜呑みにするだけでなく、実際にクライアントがどう他人と接しているのかを見る事もできる。こうすることにより、クライアントがどのような人で、どのようにセラピーを行ったらいいのかをよりうまく理解することができる。



 投稿者  Steve Vinay Gunther