Case #89 - 心の奥底を打ち明けること


リジーは少し緊張しているようでなんだ居心地が悪そうだったが、少し怒りもあるように私には感じられた。 彼女は中高生の頃、自分のスピリチュアリティに関して父とよく喧嘩をしたと言った。彼女の両親はどちらもリジーの宗教観を認めてくれなく、母は彼女のことをあざ笑い、父も反対し彼女のスピリチュアリティへの渇望をバカにした。 人によっては親が自分の宗教観を子供に押し付けて、苦しめられる人もいるが、リジーのように無宗教の親によって傷つけられる人もいる。 リジーはもう30代に入っていたが、いまでも子供の頃親から受けた批判に影響されていた。彼女は未だに探し求めていたが、親からの批判的な態度もあり、あまりたくさんの人にこの事を話したりはしなかった。なので、彼女は孤独になりスピリチュアリティに関し共に語り合える人やその考えを支えてくれる人もまわりにいなかった。 やっと彼女に出会った時の緊張感の理由が分かった。それは彼女は自分の宗教観に関してまわりから受け入れられるのではなく、批判や反対意見を予想していたからだった。 スピリチュアリティは私がとても興味を持っていて、良い思いを持っており、彼女と語り合えることだったので、私自身スピリチュアリティに興味があって彼女のような考えをもっていることを話した。 また、私たちの今いる環境は宗教論や様々な課題を語り合う場であり、ネガティブな批判などは絶対ないよう私が責任を持つと彼女に行った。 リジーには自分が安全な場所にいて、安心して自分の意見を話せることを理解してほしかったので、あえてこのように言った。今彼女のいる場所は、以前彼女が育った環境とは違う環境だということも。 しかし彼女が自分の心のうちを明かす事は大きなリスクだということも理解していた。彼女は少し肩の荷がおりたが、まだ少し緊張していると言った。私が言っている事は彼女のためになることだったが、彼女は自分の意見を安心して言える場所がいままでなかったのだから、彼女がそういうのも無理はない。 彼女の緊張感をほぐすため、あることを提案した。それは、彼女の信念や道徳論を聞き、それらについて語り合うことだった。 そこでリジーは「人は生まれもって悪を持っているのではなく、途中で迷子になってしまうのか自覚していないのかもしれない」と言った。私は彼女の考えに賛成した。こうすることは私が彼女の話に耳を傾けていて、彼女の思いや考えを受け入れていることを示しており彼女が分かりやすい方法でそれを示すことは大切だった。リジーは自分の話をやっと誰かが聞いてくれて、とても喜んでいる様子だった。私はもっと具体的に彼女の考えを知る事ができるよう、色々と質問をした。また彼女の考えはマシュー・フォックス(「Original Blessing」の作者)など、他にも同じような考えを持った人と似ていて、彼らだったら彼女の考えをもっと良く理解してくれるかもしれないと言った。 次のステップとして「自分の持っている宗教観に反する考えを聞き入れる準備はできているか」と聞いてみると彼女はうなずいた。自分の考えと反対意見を持っている人の考えを聞く事−−−これが次の段階であった。 そこで一つだけ反対意見を述べた。それは「実存責任」、つまり私たちはどのような意図で物事をしたかや、自覚しているかいないかや、精神の状態に関係なく、自分の行いには責任があるということだった。 私はこのようにして彼女の視野を少しずつ広げていき、少しずつより難しい論点を提示し、彼女がどのように答えるかを聞いてみた。私たちは深い会話をすることができ、また彼女が怒りや反抗心を持つ事の無い様、ゆっくりと様々なトピックに関して論じ合った。 私たちの会話はリジーに自分の意見や思いを超えた他の観点を見せることができ、彼女は他の考えの人と出会ってもうまく会話ができるような助けとなった。 ゲシュタルト法では常にクライアントを挑戦することと支えることのバランスを求めている。彼らが成長するために自分の心地よい場所を一歩踏み出させるのと同時に、うまく物事を取り入れることができるよう、クライアントのペースに合わせるのも大事だ。こうすることにより、クライアントは新鮮な体験をし、またセラピーを通して変化を遂げることができるのだ。



 投稿者  Steve Vinay Gunther